「絶対に失敗しない防音室の選び方」について
みなさん、こんにちは!
大阪を中心に関西の防音室の設計・工事をしている創和防音です。
防音室は非常に高い買い物です。
ですので防音室を検討している人には絶対に失敗して欲しくないと思っています。
では防音室の設置で失敗しないためにはどうすれば良いのでしょうか?
ひとつは「防音室の設置で失敗するパターン」について知ることで失敗を避けることができると思います。
そのため、今回の記事では「防音室の設置で失敗するパターン」について書きたいと思います。
ですがその前に、防音室の設置において「失敗」とは何を意味するのかを定義しておきたいと思います。
■防音室の存在意義とは
そもそも、防音室を設置する目的とは何なのか?ということを確認しておきたいと思います。
結論から言うと、防音室を設置する目的はたったひとつで「騒音トラブル」を防ぐことです。
何故そうであると言えるのか考えてみましょう。
防音室を設置する理由のほとんどは下記のような理由によるものです。
「楽器の練習がしたいけど音が隣の部屋に漏れて迷惑がかかりそう。」
「大きな音で迫力のある映画を楽しみたいけど外に音が漏れて近所迷惑になってしまうのが気になる。」
「深夜にゲームをしていたら声が外に漏れて苦情が届いた。」
「レコーディングがしたいが外の道路からの騒音が入ってしまうので静かな環境が欲しい。」
これらの理由に共通して言える事は防音室を設置する事で「騒音トラブル」を防ごうとしている、ということです。
別の角度からも考えてみましょう。
もし、自分が高い費用や時間をかけて防音室を設置したとします。
それにも関わらず騒音トラブルが解消しなかった(外部からの騒音が未だに気になる、隣の部屋からクレームが変わらず発生している)としたらどうでしょうか?
「全然意味が無かった・・・」と感じるのではないでしょうか。
防音室を設置する目的は「騒音トラブル」を防ぐことなのです。
これは防音室の存在意義であるとも言えます。
このことから、防音室の設置における失敗とは
防音室を設置したにもかかわらず「騒音トラブル」を防ぐことができなかった場合のこと
と定義したいと思います。
■防音室の設置で失敗する「3つのパターン」
防音室の設置で失敗するパターンは以下の「3つのパターン」であると考えています。
①「音を受ける側での音の聞こえ具合」を考えていなかった。
②「出したい音の最大音量」を決めていなかった。
③設置した防音室が「設計時に設定した遮音等級」を達成できていなかった。
ひとつずつ見ていきましょう。
①「音を受ける側での音の聞こえ具合」を考えていなかったパターン
「騒音トラブル」を防ぐ上で最も重要なことは「音を受ける側」でどれくらいの音が聞こえるかです。
なぜなら、騒音トラブルが発生するかどうかは「音を受ける側」が音に対してどう感じるか次第だからです。
たとえば、家の中でサックスの演奏がしたかったのでD-35の性能(35dBの音を遮音できる性能)のユニット式防音室を設置してその中で演奏していたとします。
しかし、騒音の苦情が届いてしまいました。
なぜでしょうか?
たとえばサックスの音量が110dBだったとします。
Dr-35の性能の防音室では音を35dB遮音します。
そのため防音室の外では110-35=75dBの音が漏れます。
そして隣の部屋の性能がD-25程度だった場合、
隣の部屋では75-25=50dB聞こえていると考えることができます。
※実際には部屋-部屋間の騒音レベルの計算はもっと複雑になりますがこの記事では説明のため単純化しています。
では、50dBという音量は音を受ける側でどのように感じられるのでしょうか?
日本建築学会では音を受ける側で発生している騒音レベル(音の大きさ)に応じて、その音を聞いている人がどう感じるかを下記の図で提示しています。
(画像が大きいため拡大してご覧ください)
(↑青が濃い程静かに感じ、赤が濃い程うるさく感じると解釈して頂ければと思います。)
この表から50dBという音の大きさはうるさく感じられるということがわかります。
つまり、サックスの音が隣の部屋に聞こえてしまっており、うるさく感じられる状態になっているということです。
これでは苦情を受けてしまっても仕方がありませんよね。
防音室を設置する前に、「音を受ける側での音の聞こえ具合」を考えていない(=設計していない)とこういったことが起こってしまう可能性があります。
なお、この表では35dB以下の音であれば概ね静かに感じると読み取れるため、最低でもこの程度を目標に防音室の設計をすることが求められます。
ただし、音を受ける側の環境や、出す音の種類、その人が音をどう受けとるかなどは防音室を設置する場所で様々ですので状況に応じた柔軟な設定が重要です。
おそらくですが、防音室の失敗パターンとしてはこれが最も多いのではないかと思います。
というのも、楽器演奏用の防音室としてはユニット式の防音室が有名ですが、ユニット式の防音室は隣の部屋でどれくらいの音が聞こえるか?を設計していないことがほとんどだからです。
下の画像をご覧ください。
ユニット式防音室はユニット部分のみで商品として完結している性格の商品です。
そのため、自分の部屋と隣の部屋を隔てている壁の遮音性能について考慮していない(考慮することができない)商品です。
つまり、その壁の遮音性能がわからない状態のまま設置する事がほとんどになってしまうということです。
そうすると、音を受ける側でどの程度の音が聞こえるかわからない状態になってしまうため、「音を受ける側での音の聞こえ具合」を考えていない(=設計していない)パターンになってしまうのです。
音を受ける側での音の聞こえ具合を事前に設計できない以上はこういったトラブルが起こる可能性はどうしても高くなってしまいます。
省スペース、低価格などたくさんのメリットがあるユニット式防音室ですが、購入する際は十分に注意が必要です。
オーダーメイドの防音室(部屋を丸ごと防音室にする)では音を受ける側での音の聞こえ具合を事前に調整し、必要な遮音性能を持たせられるように設計することができるためこの失敗パターンを回避することが可能です。
確実に失敗を避けたい人は音を受ける側での音の聞こえ具合を調整することができるオーダーメイドの防音室を選択した方が良いでしょう。
②「出したい音の最大音量を決めていなかった」パターン
防音室を設計する時には必ず最初に「音を受ける側での音の聞こえ具合」を決めます。
そして次に防音室の中で鳴らしたい最大音量を決めなければなりません。
これを決めていないとどうなるのでしょうか?
たとえば、家でエレキギターが弾きたいと思い防音室を購入した人がいたとします。
この人は音を受ける側での音の聞こえ具合をあらかじめ決めており、35dBの聞こえ具合になるようにと考えました。
次に、エレキギターはどの程度の音がなるのだろう?と思いネットで検索したところ90dB程度であると書いてありました。
つまり、D-55の性能の防音室を設置すれば90-55=35dBとなり計画通りになります。
そのため、D-55の防音室を防音室の業者に工事してもらいエレキギターを弾いていました。
しかし、隣の部屋から騒音の苦情が届いてしまいました。
なぜでしょうか?
実はこの人のエレキギターの音は90dBよりも大きかったのです。
エレキギターはアンプに繋いで演奏しますが、音量はアンプ側で調整することが可能です。
どれくらいの大きさの音で弾きたいかは演奏者それぞれ違います。
ネット上ではエレキギターの音は90dB程度と書いてありましたが、この人が出したいエレキギターの音量はもっと大きかったのです。
防音室を設置する前に自分が出したい最大音量を把握しておかないとこういったトラブルが発生する可能性があります。
なお、このパターンはオーダーメイド防音室を設置していたとしても起こり得る失敗パターンです。
なぜならオーダーメイド防音室はその人が出したいと思う最大の音量に合わせて設計することがほとんどであるためです。
そのためオーダーメイド防音室を依頼する際は自分が出したいと思う最大の音量をしっかりと把握しておくことが重要です。
(創和防音で防音室を作る際はこれについて失敗が無いように、事前に入念なお打ち合わせをさせて頂いております。)
このような失敗を避ける方法についてですが、
楽器演奏用途であれば自分の演奏の音量を、
映画や音楽鑑賞用途であれば理想だと思う音量を
「スマートフォンの騒音計アプリ」で測っておくことをオススメします。
「え?騒音計アプリで正確に音量が測れるの?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、弊社で使用している騒音計と数値の比較をした所そこまで悪い性能ではありませんでしたので、ある程度は信用しても問題無いと思います。
ただし、スマートフォン本体の性能などにも左右される可能性があるため、不安な方は弊社のショールーム(※)にて騒音計で測定させて頂くことも可能です。
(※ショールームは現在準備中です。完成次第案内させて頂きます。)
ご自分の楽器を持っている方は楽器を持ち込んで音を出して頂くことも可能ですのでお気軽にお問合せ下さい!
自分が防音室の中で鳴らしたい最大音量を把握することは非常に重要です。
必ず騒音計アプリなどで音を計測し、このパターンの失敗を回避しましょう。
③設置した防音室が「設計時に設定した遮音等級」を達成できていなかったパターン
防音室を設計するために音を受ける側での音の聞こえ具合を決めて、
自分が出したい最大音量もスマートフォンの騒音計アプリで計測し、
必要となる遮音等級を設定した上で防音室を設計しても、
苦情が発生するパターンがあります。
それは、
設置した防音室が「設計時に設定した遮音等級」を達成できていなかったパターン
です。
なぜこんなことが起こるのでしょうか?
それは、「工事後の防音室の性能保証」がされていなかったためです。
防音室の性能保証とは工事後の防音室においてD-55やD-60といった遮音等級を実現することを保証することです。
防音室を作った側が遮音等級を保証していれば、工事後の防音室が「設計時に設定した遮音等級」を達成できないということは発生しません。
ですので、この失敗パターンを防ぐには工事後の防音室の遮音等級を保証している業者に防音室の依頼をする事が必須と言えるでしょう。
しかし、注意点もあります。
それは遮音等級の保証が「JIS A 1419」に準じた内容になっているかどうかです。
「JIS A 1419」に準じた遮音等級の保証とは、JIS規格が定める測定方法に沿って工事後の防音室の遮音性能を測定し、その性能が各周波数帯域「125Hz・250Hz・500Hz・1000Hz・2000Hz(・4000Hz)」全てにおいて設計時の遮音性能以上であることを保証することです。
ほとんどの場合、遮音等級の保証=「JIS A 1419」に準じた内容であると解釈しても問題無いと思いますが、防音室の性能保証に対する取り組みについてしっかりと明記している業者を選ぶ方が安全だと思います。
創和防音でも設計・工事した防音室については必ず「JIS A 1419」に準じた性能保証を実施しています。
⇒創和防音での「JIS A 1419」に準じた性能保証に対する取り組みについてはこちら
■まとめ
防音室で失敗するパターンは以下の「3つのパターン」です。
①「音を受ける側での音の聞こえ具合」を考えていなかった。
②「出したい音の最大音量」を決めていなかった。
③設置した防音室が「設計時に設定した遮音等級」を達成できていなかった。
そして、それぞれのパターンで失敗を回避する方法は
①「音を受ける側での音の聞こえ具合」を35db以下を目安に調整する。
②自分が出したい音の最大音量を騒音計アプリで計測しておく。
③工事後の防音室の性能保証をしてもらう。
でした。
これらの3つのパターンを意識して絶対に失敗しない防音室選びをしましょう。
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