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注意!防音マットは足音にはあまり効果はありません!防振床開発のプロが解説

みなさん、こんにちは!

大阪を中心に関西の防音室の設計・工事をしている創和防音です。


マンションで発生する苦情の中で最も多いのは「騒音トラブル」であると言われています。


特に、足音が下階に響くことなどによる床衝撃音は騒音トラブルに繋がりやすいです。


そのため、防音対策として床に敷くことで足音を軽減すると言われている「防音マット」は非常に人気があります。


そんな「防音マット」ですが、その効果には実は「落とし穴」があります。


今回の記事では、防振床の研究・開発をしている創和防音の知見を活かし、防音マットの効果の落とし穴について解説したいと思います。


(創和防音で研究・開発している乾式防振床ドンナランの特設ページはこちら


 

■防音マットとは?

まず、防音マットとは何かについて簡単に説明しておきたいと思います。


防音マットとは弾力性のある薄いマットで、材質はEVA、ポリエチレン、PVCなど様々ですが、厚みは10mm前後の物が多く、床に敷くだけで良いため誰でも簡単に使えることが特徴です。


Amazonで「防音マット」と検索すると色々な商品を見ることが出来ます。


 

■床衝撃音には2種類ある

「防音マット」は床衝撃音を軽減するための商品です。


しかし、そもそも「床衝撃音」には2種類あり、


「軽量床衝撃音」と「重量床衝撃音」

に分かれることはご存知でしょうか?


防音マットの性能を正しく理解するためには、これら2つの違いを理解することが必要です。


●軽量床衝撃音とは

軽量床衝撃音とはスプーンや硬貨などの軽く硬いものを床に落とした際の「カツン!」といった音のことです。


また、軽量床衝撃音は高い周波数成分が大きいことが特徴です。

(要するに高い音です。)

軽量床衝撃音の図

●重量床衝撃音とは

重量床衝撃音とは子供が飛び跳ねて着地した時や大人の足音など、重く柔らかいものを床に落とした際の「ドスン!」といった音のことです。


また、重量床衝撃音は低い周波数成分が大きいことが特徴です。

(要するに低い音です。)

重量床衝撃音の説明

 

■防音マットは両方の床衝撃音を軽減できるのか?

問題は防音マットが軽量床衝撃音と重量床衝撃音の両方に対して効果があるのか?


という所ですが、


防音マットは基本的に「軽量床衝撃音」にしか効果がありません。


「重量床衝撃音」に対しては全く効果が無い、という訳ではありませんがほとんど無いと考えた方が良いです。


 

■なぜ防音マットは重量床衝撃音(足音など)に対してほとんど効果が無いのか?

理由について説明したいと思います。


重量床衝撃音は床が「振動」して伝わる低い音です。


重量床衝撃音を軽減するためには振動を軽減、および「防振」する必要がありますが、その防振性能は床の「固有振動数」によって決まります。


防振性能は固有振動数が低ければ低い程高くなります。


では低い固有振動数を達成するためにはどうすれば良いのかというと


  • 重さを「重く」する

  • 床材自体のやわらかさを「柔らかく」する


のどちらか、もしくは両方が必要となります。


しかし、防音マットは基本的に人が簡単に持ち上げることが出来る程度の重さしかないため、低い固有振動数を達成できるような重さはありません。


そのため、防音マットの固有振動数は低くないため重量床衝撃音の軽減効果は大きくないと言えるのです。


 

■重量床衝撃音を軽減できる床材にはどんなものがある?

では重量床衝撃音を軽減できる床材にはどんなものがあるのでしょうか?


ここでは2つ紹介したいと思います。


●湿式防振床

1つ目は湿式防振床と呼ばれるものです。


これは防振ゴムと呼ばれる弾性体の上に床組を設置しコンクリートを打設することで、防振ゴムなどに大きな荷重をかけることで防振効果を発揮するものです。







これは基本的に建物に後から設置することはできません。

(※建物の1階部分であれば設置できる可能性があります。)


なぜなら、あまりにも重量が大きすぎるため後から設置した場合建物の許容荷重を超えてしまうためです。


そのため、湿式防振床を設置する際はその建物を設計する段階で設置を計画しておく必要があります。


●乾式防振床

2つ目は乾式防振床と呼ばれるものです。


これも湿式防振床と同様に防振ゴムなどの弾性体を使用しますが、こちらは防振ゴムなどの上に床組を設置した後コンクリートの打設は行わずに合板などを積層することで完成します。

乾式防振床の図
乾式防振床の写真

(上の画像は弊社で研究・開発した乾式防振床ドンナランです。詳しくはこちら

湿式防振床に比べて軽量であるため、建物に後から設置することができ、住宅などでも設置することが出来るものもあります。


軽量である分湿式防振床に比べると性能が落ちますが、住宅などの床に設置できる床材としては最も「重量床衝撃音」の軽減が期待できるものになります。


●重量床衝撃音の軽減は難易度が高い

以上が重量床衝撃音を軽減できる床材の例です。


いずれも防音マットとは違い、専門業者による工事が必要な対策になります。


重量床衝撃音の軽減をするためには「弾性体」と「大きな荷重」の組み合わせが必須であり、軽量床衝撃音の軽減と比べて難易度が高いことがわかると思います。


(軽量床衝撃音は床の表面を柔らかくするだけで大幅に軽減できます。そのため防音マットやカーペットなどを敷くだけで十分に対策が可能です。)


 

■それでも足音を出来る限り防げる防音マットが欲しい場合

しかし、それでも防音マットは簡単に導入できる上、比較的安価で手に入る防音グッズですので何とか活用したいと思う人もいると思います。


ですので、できる限り足音が軽減できる防音マットの選び方を提案したいと思います。


●足音を軽減しやすい防音マットの条件

「防音マットは基本的に足音などの重量床衝撃音の軽減が苦手である」という前提で、出来る限り性能が高いものを選びたい場合は下記の2つの条件を重視して選ぶと良いと思います。


  • 柔らかいものを選ぶ

  • 分厚いものを選ぶ


●理由について

理由について説明します。


まず、重量床衝撃音の軽減のためには床材の固有振動数を下げる必要があります。


固有振動数を下げるには床材を「重く」するか、「柔らかく」するかしかありません。


しかし、防音マット単体では重さを稼ぐことは出来ないため、柔らかさを確保するしかありません。

ですので、まずは柔らかいものを探してみてください。

(Amazonなどで商品を選ぶ場合は中々柔らかさはわかりづらいと思いますが・・・)


次に出来る限り分厚いものを選んでください。


これは出来る限り「重さ」を確保することと、単純に防音マットが沈み込んだ際に足が直接床に接触しない方が下階への衝撃音を緩和出来るためです。


●注意点

基本的に柔らかいものを選ぶべきですが、柔らか過ぎると単純に歩きづらくなってしまい転倒するリスクなども考えられますので、歩行に支障がない範囲で柔らかいものを選ぶように注意しましょう。


 

■まとめ

  • 防音マットは床衝撃音を防ぐためのもの

  • 床衝撃音は「軽量床衝撃音」と「重量床衝撃音」の2種類がある

  • 防音マットは「重量床衝撃音」を軽減することは苦手

  • 「重量床衝撃音」の軽減には「湿式防振床」か「乾式防振床」の導入が一般的。ただし基本的に工事が必要になる

  • 出来る限り重量床衝撃音の軽減が期待できる防音マットを選ぶコツは「柔らかいもの」「分厚いもの」を選ぶこと

  • ただし、柔らかすぎるものを選ぶと歩行に支障が出る可能性があるため注意しましょう。


 

■おまけ

●防音カーペットはどうなのか?

防音マットと似た商品として防音カーペットなどもありますが、これも防音マットと同様に足音に対してはあまり効果はありません。(防音マットと同じ理由です)


しかしながら、防音マットと同様に「軽量床衝撃音」(硬くて軽いものを落とした時の音)に対しては高い効果がありますので「軽量床衝撃音」の対策がしたいということであれば導入しても良いと思います。


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