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創和防音の「防音室の性能保証」の取り組みについて

みなさん、こんにちは!


大阪を中心に関西の防音室の設計・工事をしている創和防音です。

今回の記事では創和防音の「防音室の性能保証」の取り組みの内容について書きたいと思います。




 


防音室の性能保証について

創和防音では設計時に決定した防音室の遮音性能が工事後の防音室でも実現することをお客様に対して保証しています。

防音室の性能保証のイラスト

防音室の存在意義とは「騒音トラブル」を防ぐことだと考えています。


しかし、工事後の防音室の遮音性能が設計時の遮音性能を満たしていなかった場合、防音室から想定以上の音が漏れることになるため「騒音トラブル」が発生してしまう可能性があります。


せっかく防音室を設置したのに「騒音トラブル」が発生してしまっては意味がありません。


そういったことを防ぐために、工事後の防音室の遮音性能が設計時の遮音性能をきちんと達成していることを確認することは防音室にとって必要不可欠です。


そのため、創和防音では工事後の防音室の遮音性能を測定し、その遮音性能が設計時の遮音性能を満たすことを必ず保証するようにしています。


しかし、「防音室の遮音性能」という目に見えないものをどのようにして保証するのでしょうか?

創和防音での取り組みについて説明したいと思います。


 

「遮音性能の保証」=「遮音等級(D値)の保証」です

防音室の遮音性能は一般的に「遮音等級(D値)」というもので表現されます。

「遮音等級(D値)」とは簡単に言うと「防音室がどれだけの音を遮断できるか」をレベル(等級)にして表したものです。


遮音等級(D値)は「D-○○」という形で表され、「D-50」や「D-60」の様に表記します。

例えば

  • D-50という遮音等級であれば50dB遮音する性能

  • D-60という遮音等級であれば60dB遮音する性能

という形で解釈頂ければ大丈夫です。


遮音等級(D値)の説明

つまり、「遮音性能の保証」=「遮音等級(D値)の保証」となるのです。


 

「遮音等級(D値)」はJISによって規定された評価方法です

※現在「JIS A 1419」では「D値」から「Dr値」と改められていますが同じ意味と捉えて頂いて問題ありません。


先程説明した通り、「遮音等級(D値)」とは「防音室がどれだけの音を遮断するか」をレベル(等級)にして表したものです。


日本の建築音響業界では部屋の遮音性能を表す際にはほぼ必ずこの「遮音等級(D値)」を使います。

しかし、なぜこの遮音等級を使用することが一般的になっているのでしょうか?


それは、遮音等級がJISによって規定された「公正でかつ利便性の高い評価方法」であるためです。


 

「遮音等級(D値)」を使う理由について

実は遮音性能を「遮音等級」以外を使って表現する場合、かなり難しくなってしまいます。


例えば防音室の性能を表現する際に「遮音等級」を使用せずに「50dB遮音する防音室」とだけ表現した場合、500Hzの周波数帯域でだけ50dB遮音する性能があるのみで、他の周波数帯域では少ししか遮音していない、という風に解釈の余地が生まれてしまうのです。

(音には周波数というものがあり、遮音性能も周波数帯域ごとに存在しているためです。)


そのため遮音性能を正確に表現しようとした場合、周波数帯域毎に何dB遮音するかを指定しなければなりません。


加えて、遮音性能の測定方法についても細かに指定しなければなりません。


(どのような音源を使うのか、どのような測定機器を使うのか、測定機器はどのように配置するのか・・・などにもよってデータの数値にブレが生まれてしまい遮音性能が変わってしまうためです。)


しかし、そういったことを毎回指定すると非常に煩雑になってしまいます。

また、設計・工事をする会社ごとで「50dB遮音する防音室」の性能がバラバラになってしまい遮音性能の公正性が担保できなくなってしまいます。


ですが、「D-○○」という、JISによって規定された「遮音等級(D値)」で防音室の性能を表現する場合は

  • 「JIS A 1417」で規定される遮音性能の測定方法

  • 「JIS A 1419」で規定される遮音性能の評価方法(「125Hz・250Hz・500Hz・1000Hz・2000Hz(・4000Hz)」の全ての周波数において一定の遮音性能をクリアしていること等)

上記のような内容に対してJISの規定を満たしていることが求められます。


そのためJIS規格である「遮音等級(D値)」を使用する場合、各周波数に対する性能の指定や遮音性能の測定方法について厳密に規定されているため、遮音性能を表現する際には細かな指示などは必要なく基本的には「D-○○」と表現するだけで良いのです。


つまり、「遮音等級」は遮音性能を評価する上で必要な前提条件が規格の中で全て整備されているため利便性が高く、また、評価方法が統一されているため遮音性能の公正性も担保できるのです。


そのため、日本の建築音響業界ではJISによって規定された「遮音等級」が一般的に使われているのです。


創和防音でも防音室の遮音性能を公正に評価するために、この「遮音等級」を使用するようにしています。


 

遮音等級(D値)の評価方法について

では遮音等級が実際にどのようにして評価されるのか説明したいと思います。


ですがその前に「室間音圧レベル差」の説明が必要になります。


<「室間音圧レベル差」とは、音源室側と受音室側との音の大きさの差です>

そもそも遮音とは「音を遮る」ことですが、遮音等級はその部屋の「音を遮る量」を等級にしたものです。


そのためその部屋の「音を遮る量」の計測が必要になるのですが、それが「室間音圧レベル差」なのです。


下に「室間音圧レベル差」の簡単な図解を用意しました。


室間音圧レベル差の説明

まず音が鳴っている部屋(音源室)側で音の大きさを測ります。

この時の音の大きさが100dBだったとします。

次に音を受けている部屋(受音室)側で音の大きさを測ります。

この時の音の大きさが40dBだったとします。

この時、室間音圧レベル差はそれぞれの音の大きさの差となるため

室間音圧レベル差=100dB-40dB=60dB

となります。


要するに「室間音圧レベル差」とは「音源室側と受音室側の音の大きさの差」ということです。


なお、この「室間音圧レベル差」は周波数帯域毎に存在するため、周波数帯域毎に計測する必要があります。


<等級曲線図を使った遮音等級の評価方法について>

「遮音等級」は「JIS A 1419」で規定されているものです。

「JIS A 1419」における「遮音等級」を使って部屋の遮音性能を評価する際は下の「等級曲線」と呼ばれる図を使います。

JIS A 1419 の「空気音遮断性能の周波数特性と等級(等級曲線)」

次に「JIS A 1417」で規定された通りの測定方法(※この測定方法については後述します)で測定した室間音圧レベル差のデータをこの図に対して周波数帯域毎にプロットします。

この時に記録する周波数帯域は「125Hz・250Hz・500Hz・1000Hz・2000Hz(+4000Hz)」となります。

※本来「JIS A 1419」では4000Hzに対する規定は無いため厳密には評価する必要はありませんが、建築音響業界では評価することがほとんどであるため創和防音では必ず4000Hzの周波数帯域も評価するようにしています。


JIS A 1419 による遮音等級の評価方法の説明

「等級曲線」による評価では、周波数帯域毎にプロットした室間音圧レベル差がいずれかの基準曲線の全ての周波数帯域を上回っている場合に当該基準曲線の遮音等級であると評価します。

ただし、各周波数帯域に対してそれぞれ2dBまでは下回ることが許容されています。


JIS A 1419 による遮音等級の評価方法の説明

今回の場合では2000Hzの周波数帯域にてDr-50の曲線に対して2dB下回っていますが、許容範囲内となります。


つまりこの場合の遮音等級は「Dr-50」ということになります。


これが「JIS A 1419」で規定されている等級曲線図を使った遮音性能の評価方法です。


<創和防音では主に「日本建築学会」が規定する等級曲線図を使用します>

なお、創和防音では実際には「JIS A 1419」で規定されている図ではなく「日本建築学会」が規定している「音圧レベル差に関する遮音等級の基準周波数特性」の図を主に使用しています。


日本建築学会が規定する「音圧レベル差に関する遮音等級の基準周波数特性」

理由は「日本建築学会」の等級曲線図はJISの等級曲線で規定されている遮音等級を網羅しつつ、より広範な遮音等級をカバーしているためです。


たとえば「D-85」の遮音等級はJISの方にはありませんが「日本建築学会」の方ではカバーされています。


下にJISで規定されている範囲とされていない範囲を色分けしたものを用意しました。


日本建築学会が規定する「音圧レベル差に関する遮音等級の基準周波数特性」の色分けバージョン

日本建築学会の方の等級曲線図では性能が低い範囲も高い範囲も幅広い遮音等級をカバーしていることがわかります。


実際、D-65以上の性能の防音室を作ることもあるため、JISの等級曲線図では対応できない可能性があります。


そのため創和防音では主に「日本建築学会」の方の等級曲線図を使用するようにしています。


※なお、「日本建築学会」の等級曲線図とJISの等級曲線図を使った場合とで遮音等級に差が出ることはありませんのでご安心ください。(網羅している範囲が異なるだけで被っている範囲の曲線は全く同じ曲線であるため遮音性能に差は出ません。)


 

測定機器の配置について

遮音等級を測定する際には「JIS A 1417」に規定された方法に従って音の計測を行う必要があります。


「JIS A 1417」では測定機器の配置についても規定があるため、その規定を満たす必要があります。


ここでは「JIS A 1417」に準じた測定機器の配置の例について紹介します。


<測定機器の配置の規定>

まず、「JIS A 1417」に記載されている測定機器の配置の規定について整理したいと思います。


<使用機器>

●スピーカー

●アンプ(スピーカーに内蔵されている場合は別途用意する必要はありません)

●雑音発生器

●騒音計


<測定条件>

●測定点は空間的に均等に分布させること

●測定点の数は5点以上とすること

●測定点は室境界、拡散体などから0.5m以上離れていること

●測定点間の距離は0.7m以上離れていること、そのうち、少なくとも2箇所の間隔は1.4m以上とする

●音源の中心は室境界面から0.5m以上離れていること

●音源位置の設定にあたっては、側路伝搬が生じないように、また、音源室内に置ける空間的なレベルの変動が大きくならないように十分に注意すること

●音源がある側の部屋では、測定点は音源から1m以上離れていること


<推奨事項>

●特に容積の小さい室では、音源の位置は部屋の隅に設置するとよい


<備考>

●部屋の大きさによっては規定の間隔で測定点を設定できない場合もありますが、その場合は出来る限り部屋の中で測定点を均等に分布させて測定します。


概ね上記の通りとなりますが、文章ではわかりづらいと思いますので測定のパターン毎に図にしたものを下に用意しました。


<受音室側を測定する場合>

JIS A 1417 に準じた部屋間の空気音遮断性能の測定の例(受音室側を測定する場合)

<音源室側を測定する場合>

JIS A 1417 に準じた部屋間の空気音遮断性能の測定の例(音源室側を測定する場合)

<上下階の受音室側を測定する場合>

JIS A 1417 に準じた部屋間の空気音遮断性能の測定の例(上下階の受音室側を測定する場合)

※上階と下階の測定は他の居住者様の空間であることが多いため、測定ができないことが多いです。


以上となります。


JISによる測定機器の配置の規定が非常に厳密に規定されていることがわかると思います。


実際には測定する現場の状況に応じて側路伝搬などが発生しないようにスピーカーの位置の工夫が必要であったり、JISの規定以外にも留意しなければならないことは多いため、遮音等級の測定は専門性の高い工程であると言えます。


 

測定機器の詳細について

「JIS A 1417」では測定機器自体についても規定があるため、その規定を満たした機器を使う必要があります。


ここでは創和防音が実際に使用している測定機器を紹介したいと思います。


<校正された精密騒音計>

「JIS A 1417」では「JIS C 1505」に規定する精密騒音計を使用することが規定されています。


ただし、現在は「JIS C 1505」は廃止されているため「JIS C 1509」に規定される精密騒音計を使用する必要があります。


創和防音ではこの規格を満たした精密騒音計として、RION社の「NA-28」を用意し指定検定機関で定期的に検定を受け、合格したものを使用しています。

RION社の精密騒音計のNA-28
RION社の精密騒音計のNA-28と検定合格シール


<雑音発生器>

音源室内で発生させる音は、「定常で測定対象周波数範囲の全体に渡って連続的なスペクトルをもつものとする」と記載されています。


創和防音ではこの条件を満たすことができる音源としてRION社の雑音発生器「SF-06」を使用し、ピンクノイズを発生させています。


RION社の雑音発生器のSF-06

<スピーカー・アンプ>

音源の音響パワーは、「すべての周波数帯域で受音室内の音圧レベルが暗騒音のレベルよりも10dB以上大きくなるように設定する」と記載されています。


創和防音ではこれを満たすことができるスピーカー・アンプとしてアンプ内蔵型のスピーカーの「MSR-400」を使用しています。


YAMAHAのアンプ内蔵スピーカーのMSR-400

以上が創和防音が使用している機器になります。


他にも補助的に使用している機器などもありますが、基本的には上記の機器で遮音等級の測定を行っています。


 

測定ができない箇所について

防音室を設置する場所によっては工事後の防音室の遮音等級の測定ができない箇所が発生する場合があります。


例えばマンションで防音室を設置した場合は上下階に対する遮音等級と隣の住居への遮音等級の測定は、他の居住者様の部屋の中での測定が必要となるため困難な場合が多いです。


その場合は個々の防音室の状況に合わせて対応させて頂いておりますが、一例としては設計時の目標遮音等級を通常必要となる遮音等級よりもワンランク上の遮音等級に設定することで性能に余裕を持たせるなどの対応を実施しております。


 

まとめ

  • 創和防音では工事後の防音室の遮音性能を保証するために設計時に決定した「遮音等級(D値)」を保証するようにしています。

  • 「遮音等級(D値)」は「JIS A 1419」によって規定された遮音性能の評価方法であり、音の測定方法、測定データの評価方法などが厳密に規定されています。

  • 創和防音では「JIS A 1419」の規定を順守して「遮音等級(D値)」の測定・保証を実施しています。


実際には遮音等級の測定には更に細かなノウハウがありますが、以上が創和防音の防音室の性能保証に関する取り組みの概要になります。


遮音等級の測定は専門性の高い工程になりますので、防音室の遮音等級の保証が必要な場合は必ず防音を専門的に扱っている業者に依頼しましょう。


創和防音では普段から防音室の遮音等級の保証を行っておりますので安心してご依頼頂ければと思います。


 

おまけ ~もうひとつの遮音等級「L値」について~

防音室の遮音性能の保証の説明の中で「JIS A 1419」で規定される遮音等級(D値)を紹介しましたが、「JIS A 1419」に規定される遮音等級にはもうひとつ「L値」というものもあります。


これは床の衝撃音に対する遮音等級で、D値が空気伝搬音の遮音等級であるのに対し、L値は固体伝搬音の遮音等級になります。 このL値に関しては別の記事の中で詳しく取り上げたいと思います。


防音室の遮音性能の保証内容としてL値を含めていない理由についてですが、これはほとんどの物件でL値の測定が困難なためです。


L値を測定する場合、防音室の下の部屋で音の計測が必要ですがマンションなどの場合防音室の下は他の居住者様の部屋になっているため立ち入りが困難となります。


また、L値の測定では床に対して非常に大きな衝撃を加えるため、固体伝搬音が直下の部屋のみならずその隣の部屋や上の階など、そのマンション全体に大きな振動が伝わってしまうため、他の居住者様への負担の大きさから測定が困難であるという側面もあります。


また、戸建ての場合は1階に防音室を設置する事がほとんどであるためこちらも測定ができません。


しかし、L値の測定ができないからといって床の固体伝搬音に対する対策をおろそかにすることはありませんのでご安心ください。


防音室の用途にもよりますが必要に応じて床の仕様を計算の上決定します。(特にドラム演奏などの床に直接振動が伝わる用途の場合は必ず行います。)


特に、弊社では床衝撃音対策用の乾式防振床を独自に実験・開発し特許も取得しており、床衝撃音に対する対策は得意であると自負しております。


なお、弊社が実験・開発した乾式防振床「ドンナラン」は乾式防振床においてはトップクラスの性能を実現しています。


興味のある方は是非お気軽にお問合せ下さい。

⇒ドンナラン特設ページはこちら


「防音室を設置したいけど特に下階への衝撃音が特に心配・・・」とお悩みの方は是非一度床衝撃音対策が得意な創和防音にご相談下さい!

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