2つの床の遮音等級 「遮音等級L値」と「ΔL等級」について説明します。
みなさん、こんにちは!
大阪を中心に関西の防音室の設計・工事をしている創和防音です。
防音室の性能を示す際に「D-○○」といった形でその性能が示されているのを見たことは無いでしょうか?
これは遮音等級D値と呼ばれるもので、その部屋がどれくらいの空気伝搬音を遮断することができるかを等級(レベル)にして示したものです。
(空気伝搬音とは空気が振動することにより伝わる音の事です。これに対して固体が振動することにより伝わる音を固体伝搬音と言い、音はこの2つの種類に大別されます。詳しくはこちらの記事で解説しています。)
遮音等級D値はJISが定めた規格であり、「JIS A 1419」によって規定されています。
遮音等級D値はユニット式防音室の遮音性能を示す際にも使われているため、よく目にする機会があるのではないでしょうか。
しかし、実は遮音等級はD値だけではなく、L値というものも存在します。
■遮音等級L値とは?
簡単に言うと、遮音等級D値が室間の空気伝搬音を遮断する性能の等級であるのに対し、遮音等級L値はその部屋の床全体の固体伝搬音を遮断する性能の等級になります。
もう少し正確に言うと固体伝搬音の中でも「床衝撃音」を遮断する性能の等級です。
この場合の床衝撃音とは床に物を落とした時や、足で床を踏みしめた時などに発生する音のことを指しています。
遮音等級L値もJISが定めた規格であり、「JIS A 1419」によって規定されています。
なお、こちらは遮音等級D値と違い、Lの後に続く数字が小さい程遮音性能が高いという内容になっています。
■遮音等級L値には2種類ある?
床衝撃音は「軽量床衝撃音」と「重量床衝撃音」の2種類に区別されており、内容は下記の通りです。
「軽量床衝撃音」はスプーンや硬貨などの軽く硬いものを床に落とした際の「コツン」といったような音のことを指す
「重量床衝撃音」は子供が飛び跳ねて着地した時や大人の足音など、重く柔らかいものを床に落とした際の「ドスン」といったような音の事を指す
遮音等級L値もこの床衝撃音の種類に応じて2つの種類があり、内容は下記の通りです。
「軽量床衝撃音」に対する遮断性能の等級は「LL-○○」と表記する
「重量床衝撃音」に対する遮断性能の等級は「LH-○○」と表記する
遮音等級D値とは違い、L値には2種類あることに注意が必要です。
つまり、先程のL値の説明の図は実際には下の図の形となります。
■床材のための遮音等級、ΔL等級(デルタエルトウキュウ)について
床の遮音性能を表す等級としてもうひとつ、「ΔL等級」というものがあります。
ΔL等級は遮音等級L値よりも後に作られた等級です。
ここでは
なぜΔL等級が作られたのか?
ΔL等級とは何か?
について説明したいと思います。
●ΔL等級誕生の背景
遮音等級L値はその部屋の床全体の床衝撃音遮断性能を評価するものであるという性質上、異なる仕様で建てられた建物で遮音等級L値を測定した場合、異なる等級が計測されます。
そのため、同じ床材を使っていたとしても躯体部分(+下階天井)が異なれば床全体としては異なる仕様となり、遮音等級L値も異なる等級が計測されます。
つまり、遮音等級L値の「床全体を評価する」という仕組み上、床材のみの性能を評価することは難しいのです。
しかしながら、当時は床の遮音性能を示す基準はこの遮音等級L値しか無かったため、床材の遮音性能の表示方法として、実験室などで計測された遮音等級L値を基に「推定L等級」というものを算出し使用していました。
※「推定L等級」とは実験室などで計測した遮音等級L値を用いて、床材が設置される現場で得られるであろう性能を推定したものです。なお、「推定L等級」と「遮音等級L値」は別物です。
これにより「推定L等級でL-50と表記されていたから、この床材を使用すれば現場に設置しても同じ性能(L-50)が出るだろう」などの誤解を生む状況が発生していました。 (同じ床材を使用したとしても床材を設置する躯体(+下階天井)の状況によって、現場ごとに遮音等級L値は変動してしまいます。そのため推定L等級=現場のL値という解釈は誤解と言えるのです。)
そこで、床材の遮音性能を表示する上での諸問題を解決するために生まれたのがΔL(デルタエル)等級です。
●ΔL等級とは
ΔL等級は特定の条件の実験室以外での計測を認めないこと、つまり測定条件を標準化することにより、床材のみの遮音性能の評価ができるようにしたものです。
つまり、ΔL等級では床全体ではなく「床材のみ」の遮音性能が評価されているということです。
これにより床材を使用する側に誤解を生むことなく床材の遮音性能の表示ができるようになったのです。
なお、こちらは遮音等級L値と違い、Lの後に続く数字が大きい程遮音性能が高いという内容になっています。
■ΔL等級と遮音等級L値の役割の違いについて
ΔL等級の登場により、床の遮音に関する指標が2つ存在する状況となっていますが、それぞれ役割が異なるためここで表にして整理しておきたいと思います。
遮音等級L値 | ΔL等級 | |
評価の対象 | 躯体(+下階天井)+床材 | 床材のみ |
等級が表しているもの | 下階での静けさ | 床材のみの床衝撃音低減量 |
用途 | その部屋の床全体の遮音性能を示したい時に使用する | 床材のみの遮音性能を示したい時に使用する |
それぞれで「評価の対象」と「等級が表しているもの」が異なっているため「用途」に応じた使い分けが必要です。
■まとめ
遮音等級L値とは躯体を含む床全体の床衝撃音遮断性能を等級にして表したもの
遮音等級L値では床材のみの床衝撃音遮断性能の評価ができなかった。
床材のみの床衝撃音遮断性能の評価を可能にするためにΔL等級が生まれた。
ΔL等級と遮音等級L値は役割が異なっているため、必要に応じて使い分けが必要。
■おまけ
●遮音性能を謳う床材を選ぶ時の注意点
騒音問題に対する意識が高まっている昨今、防音できる床材としてΔL等級が表示された床材が発売されていたりします。
しかし、このような遮音性能を謳う床材商品を選ぶ時には注意しなければならない点があります。
それは「ΔLL等級」と「ΔLH等級」の「両方」で高い性能を示しているかどうかです。
例えば「ΔLL等級」のみが高く「ΔLH等級」が低い場合は、スプーンや硬貨を落とした時のような高くて硬い音(軽量床衝撃音)に対しては遮音効果を見込むことができますが、
大人の足音や子供が飛び跳ねる音のような重くて柔らかい音(重量床衝撃音)に対しては大きな遮音効果は見込めません。
これはカーペット・マット・フロアタイル(薄い床材)などの商品で多いパターンです。
上記のような床材を購入しようと思っている方は必ず
「ΔLH等級」を表示しているか
「ΔLH等級」が高い性能を示しているか
の2点を確認しましょう。
これが確認できない場合は重量床衝撃音に対しては大きな効果は無い可能性が高いので要注意です。
もし、軽量床衝撃音に対してだけ対策がしたい、ということであればカーペットなどのような「ΔLL等級」のみが高い商品の購入でも問題ありません。
しかし、重量床衝撃音に対して対策したい場合は「ΔLH等級」が高い商品を購入する必要がありますので要注意です。
●創和防音が開発した高性能乾式防振床「ドンナラン」
なお、創和防音でも床衝撃音対策用の床材を開発しており特許も取得しています。
それが「ドンナラン」です。
(↑クリックで創和防音の特設ページに飛びます)
ドンナランは「ΔLL等級」と「ΔLH等級」共に乾式防振床としては最高クラスの性能を誇っています。
(上記画像のΔL等級は日本建築総合試験所での試験結果です。)
今までにフィットネスジムなどを中心に導入実績があり、重量床衝撃音に対して大きな効果を発揮してきました。
(施工実績はこちら ※創和設計のHPへ飛びます)
もし床の衝撃音対策でお悩みの方は是非お気軽にお問合せください。
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