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防振とは?防音に不可欠な要素です!~防振効果が高くなる条件についても解説~

みなさん、こんにちは!

大阪を中心に関西の防音室の設計・工事をしている創和防音です。


防音のことについて調べた際に、「防振」というワードに出会ったことは無いでしょうか?


防振は防音を考える上で非常に重要な要素です。


防振を無視していては防音は出来ないと言っても過言ではありません。


今回の記事では「防振」とは何か?について説明していきたいと思います。


 

■防振とは?

字の通り「振動を防ぐこと」を意味しています。


空気や液体も振動しますが、防音における防振は騒音源によって固体が振動することを防ぐことを意味しています。


なお、固体が振動することによって発生する音のことを「固体伝搬音」と言います。


つまり、防音における防振とは固体伝搬音を防ぐ(軽減する)ことと言えます。


 

■なぜ防音にとって防振が重要なのか?

音は「空気伝搬音」と「固体伝搬音」の2種類に分けることが出来ます。


空気伝搬音は空気を介して伝わる音で、固体伝搬音は固体を介して伝わる音であり、それぞれ性質が異なるため、これらの防音をするためにはそれぞれ別々の対策をしなければなりません。


たとえば、空気伝搬音は「質量則」と「中空構造」を駆使することである程度対策することが出来ますが、固体伝搬音の対策としては不十分です。


つまり、「防振」をしなければいくら空気伝搬音に対する対策を施しても、固体伝搬音を防ぐことが出来ず、防音が不完全になってしまうのです。


これが防音にとって防振が必要不可欠である理由です。


ここで、説明のために「防振をしなかった場合」と「防振をした場合」の違いを図にしました。


固体伝搬音が隣の部屋に伝わるイメージ1

まず、固体伝搬音が隣の部屋に伝わるメカニズムについてですが、図の通り、音源から床に伝わる固体伝搬音が隣の部屋の壁・床・天井を振動させ、その振動が空気伝搬音として再放射されることにより伝わります。


防振をしなかった場合は固体伝搬音が特に減衰されずに隣の部屋に伝搬してしまいます。


固体伝搬音が隣の部屋に伝わるイメージ2

防振をした場合は床に伝わる固体伝搬音が防振材によって減衰され、隣の部屋で再放射される空気伝搬音もその分小さくなります。


 

■防振の効果はどうやって決まる?

防振が防音にとって重要であることはわかりましたが、では防振の効果はどうやって決まるのでしょうか?


なんとなく、柔らかいものを使えば良さそう・・・なイメージがあるかと思いますが、半分合っていますがそれだけではありません。


実は、防振効果は防振材の「固有振動数」というものが低ければ低いほど効果が高くなります。


 

■なぜ固有振動数が低いほど防振効果が高いのか?

●固有振動数とは?

まず、「固有振動数」というものについて説明します。


木琴を叩いたことはあるでしょうか?


木琴の画像

木琴はドの音であればどんな叩き方をしても基本的には同じ高さの音が鳴ります。


これはその木琴がその音の高さの固有振動数をもっており、振動を受けた際にその固有振動数で振動するため、常に同じ音の高さで鳴るのです。


これが固有振動数です。


材料は全て、このような固有の振動数を持っており、防振ゴムのような防振材にも固有振動数が存在します。


防振を考える上で、この固有振動数が非常に重要になります。


●固有振動数が低いほど防振効果が高い理由

防振の効果は「振動伝達率」というもので表現することができます。


これは「振動源による振動」と「防振材などを介した後の振動」との比のことで、防振材などによって振動がどれだけ変化したかを表すものです。


振動伝達率の式

振動伝達率が1以下になっていれば振動が軽減されており、1以上になっていれば振動が増幅されたことを示します。


この振動伝達率は固有振動数がわかっていれば、下記の式によっても求めることができ、防振材の共振周波数(≒固有振動数)と振動源の周波数によって決まります。(ここでは減衰比が0の場合を考えます)


振動伝達率の公式

※共振周波数と固有振動数は厳密には異なるものですが、数値的にはほぼ一致するためほとんど同じものと捉えて問題ありません。(特に、減衰比を0とする場合は同じになります)


この式をグラフにするとこのようになります。


振動伝達率のグラフ

このグラフからわかることは、

  • 振動数比が√2以下の場合は振動伝達率が1以上となっており、防振効果が発揮されないことがわかる。つまり、防振材の固有振動数の「√2倍」よりも低い周波数に対しては防振出来ないことがわかる。

  • 振動数比が1、つまり、固有振動数と振動源の周波数が一致した場合は共振が起こるため振動伝達率が最も高くなり、かなり音を増幅してしまうことがわかる。

  • 振動数比が√2以上の場合は振動伝達率が1以下となっており、防振効果が発揮されることがわかる。つまり、防振材は固有振動数の「√2倍」よりも高い周波数に対して防振効果を発揮することがわかる。

これらのことを図に当てはめると下のようになります。


振動伝達率のグラフ2

これらのことから、

固有振動数が低いほど、より多くの周波数に対して振動数比を高くできるため、防振効果が発揮されやすい

ことがわかります。


これが固有振動数が低いほど防振効果が高くなる理由です。


 

■固有振動数を低くする方法は?

固有振動数が低いほど防振効果が高くなることはわかりましたが、防振材の固有振動数を低くするにはどうすれば良いのでしょうか?


これは固有振動数を求める式を見ると、その条件がわかります。


固有振動数(Hz)を求める式は下記になります。

固有振動数の公式

この式からわかることは、

  • ばね定数(硬さ)が低いほど

  • 質量が大きいほど

固有振動数は低くなる、ということです。


つまり防振床の場合、固有振動数を低くしたい場合は

  • 防振材の上にかかる荷重をできるだけ重く、

  • 防振材のばね定数を低く(防振材を柔らかく)

すれば良い、ということがわかります。


 

■防音における防振の具体的な例

ここまでで、防振の重要性と防振の効果を高める方法について説明してきました。


しかし、理屈だけ説明されてもあまりピンとこないものだと思いますので、更なる防振の理解のために、実際に防振がどのように防音に導入されているのか紹介したいと思います。


●湿式防振床

これは防振ゴムの上に床組を設置しコンクリートを打設することで、防振ゴムに大きな荷重がかかり、低い固有振動数を実現しています。


湿式防振床は防振ゴムに大きな荷重をかけることが可能であり、固有振動数を下げやすいため、防振床の中では最も防振効果が高いものになります。


しかし、これは基本的に建物に後から設置することはできません。

(※建物の1階部分であれば設置できる可能性があります。)


なぜなら、あまりにも重量が大きすぎるため後から設置した場合建物の許容荷重を超えてしまうためです。


そのため、湿式防振床を設置する際はその建物を設計する段階で設置を計画しておく必要があります。


●乾式防振床

こちらも湿式防振床と同様に防振ゴムを使用しますが、こちらは防振ゴムなどの上に床組を設置した後、コンクリートの打設は行わずに合板などを積層することで防振ゴムに荷重をかけて固有振動数を下げています。

乾式防振床ドンナランの構成図
乾式防振床ドンナランの断面写真

(上の画像は弊社で研究・開発した乾式防振床ドンナランです。詳しくはこちら


湿式防振床に比べて軽量であるため、湿式防振床に比べると固有振動数は高くなってしまう分、防振性能は劣ります。


しかし、湿式防振床に比べて軽量であるため、建物に後から設置することができ、住宅などでも設置することが出来るものもあります。


 

■まとめ

  • 防音における防振とは、固体伝搬音を防ぐ(軽減する)ことを意味する

  • 音は空気伝搬音と固体伝搬音の2つに区別されるが、固体伝搬音に対する効果的な対策は防振でしか実現できないため、防振が重要となっている

  • 防振の効果は防振材の固有振動数が低いほど高まる

  • 防振材の固有振動数は、防振材の上にかかる荷重を重く、防振材のバネ定数を低く(防振材を柔らかく)するほど低くなる

  • 防振は防音においては主に湿式防振床や乾式防振床などの形で導入されている


 

■おまけ~ゴム以外にも防振材がある~

記事本編では防振の際に使用する防振材として「ゴム」を例として扱ってきましたが、実際にはゴム以外にも防振材として使用される材料があります。


ここでは、簡単にゴム以外の防振材を紹介したいと思います。


●空気ばね

空気ばねとは、密閉した空気(圧縮空気)を押すと反発する性質して元に戻ろうとする性質(弾性)を生かして、空気をばねとして使用したものです。

空気ばねの画像

空気ばねの特徴は、様々な防振材の中でも最も低い固有振動数を実現できることです。


しかしながら、コスト面などで他の防振材よりも高くなってしまう傾向にあります。


●金属ばね

金属ばねは恐らく「ばね」と聞いて真っ先に想像するものでは無いでしょうか。

金属ばねの画像

金属ばねの特徴は、空気ばねに次いで低い固有振動数を実現できることです。


しかし、金属ばねには「サージング」と呼ばれる共振現象により特定の周波数において防振性能が低下するという特有の弱点もあります。


(サージングによる共振現象を緩和する対策をすることも可能です)


●多孔質系緩衝材

これは、グラスウールやロックウール、発泡スチロールなどが該当します。


多孔質系緩衝材の特徴は、他の防振材と比較して簡単に導入ができる反面、固有振動数が低く設定出来ないため防振性能に劣ることと、載荷荷重が増加するにしたがってばね定数が大きくなる(材料自体が潰れて硬くなる)ことにより固有振動数が更に上がり防振性能が下がってしまうことです。


そのため、多孔質系緩衝材の防振床は比較的簡易的な使用に限られます。


しかしながら、そんな多孔質系緩衝材の弱点をある程度克服したものもあります。


それが「PSブロック」という防振材です。

PSブロックの構成図

画像の通り、高発泡ポリスチレンフォームに防振ゴムを組み合わせた構造になっていますが、この防振ゴムにより高発泡ポリスチレンフォームが潰れるのを防ぐことで固有振動数をある程度一定に保つ仕組みになっており、多孔質系緩衝材の弱点をカバーしています。


●まとめ

ここまでそれぞれの防振材の特徴について紹介してきましたが、ここでそれぞれの防振材の防振性能の傾向を簡単に図にしてみました。

防振材の種類による防振性能の傾向

なお、空気ばねや金属ばねは防振性能を高くすることができる反面、導入コストが比較的高いため、防音室の防振材としてはあまり導入されることはありません。


防音室の防振材としては、本格的な対策をする場合は防振ゴムが多く、簡易的な対策の場合は多孔質系材料が使用される傾向にあります。

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