実はデシベル(dB)には種類があります。~「音圧レベル」の種類について A特性、C特性、Z特性~
みなさん、こんにちは!
大阪を中心に関西の防音室の設計・工事をしている創和防音です。
日本全体、特に都市部において騒音問題に対する意識が高まってきている昨今ですが、スマートフォンの登場により騒音計アプリで手軽に音圧レベル(デシベルで表示される音の大きさです)の計測ができるようになったり、Amazonなどで数千円から買える騒音計が販売されていたりと、音圧レベルの計測が非常に身近な存在となっています。
YouTubeなどを見ていても自作の防音室の性能を測定する為にAmazonなどで購入した数千円~の騒音計や騒音計アプリなどを使ってその性能を確かめている様子などが投稿されたりしているのもよく見かけます。
そんな、我々にとって身近な存在となった音圧レベルですが、騒音計で測定される音圧レベルには種類があることはご存じでしょうか?
実はこの音圧レベルの種類を知っていないと、正確な音の測定はできません。
この記事では音圧レベルの種類とその用途について説明したいと思います。
■騒音計で計測できる音圧レベルには種類がある?~A特性、C特性、Z特性について~
騒音計を使用して音圧レベルを測定する際、一口に「音圧レベル」と言っても、実際にはいくつかの種類があります。
特によく用いられるのが、A特性、C特性、Z特性です。
(※現在ではC特性はあまり使用されません)
騒音計などで計測された音圧レベルは必ずなんらかの特性で計測されており、それぞれの特性は全くの別物です。
そのため音圧レベルを扱う際には
「その音圧レベルが何特性なのか?」
を正確に把握していることが必要不可欠なのです。
ここではこれら3つの特性について説明し、それぞれの特性の使い分けについて書いていきたいと思います。
●A特性
A特性は、人の聴覚がどのように音を感じるかを近似した特性です。(あくまで近似であり厳密に人間の聴覚を反映したものではないことに注意が必要です。)
人の耳は、全ての周波数の音を同じようには聞き取りません。特に、低周波数の音(低い音)と高周波数の音(高い音)は、その中間の周波数の音よりも知覚しにくいのです。
A特性はこの聴覚の特性を近似したものであるため、特に低周波数と高周波数の音を減衰させます。
騒音規制法などでも使用されるのがこのA特性です。 なお、このA特性で計測した音圧レベルはA特性で計測をしたことを明示するために「dBA」と記載することが一般的です。
●C特性
C特性は、人が大きい音を聞いた際の聴感を近似して作られた特性です。
そのため、爆発音や衝撃音などの高い音圧レベルを測定するのに適していると言われています。
なお、C特性は低周波数と高周波数の音に対してA特性ほどの減衰を加えません。
ただし、現在では高い音圧レベルでもA特性を使用する方が良いことが明らかになったためC特性はほとんど使用されなくなっています。
●Z特性(フラット特性)
Z特性、またはフラット特性は、周波数に対して平坦な応答となります。
先程までの特性とは違い、人の聴感とは無関係な特性であるため周波数毎に重み付けはされていません。
そのため、Z特性は音をほぼそのままの形で捉えるため、実際の音環境を歪みなく測定したい場合に用いられます。
その性格からZ特性は音響測定で使用されることが多いです。
●すべての特性の比較(A/C/Z)
A/C/Zのすべての特性を一つのグラフにまとめました。
A特性の重み付けが非常に大きいことがわかります。
■どの特性を使うべきか?
使用する特性は、測定したい騒音の種類や目的によって異なります。
<騒音レベルを測定したい場合>
恐らく、騒音計の最も身近な用途は騒音レベルの測定ではないでしょうか。
騒音レベルを測定する場合は一般的にA特性を使用します。
A特性は簡単に言うとその音の「うるささ」を計測するのに向いています。
実は、一般的に「騒音レベル」とは「A特性音圧レベル」のことを指しているのです。
ですので騒音計や騒音計アプリを使って騒音を計測する場合は必ず「A特性」で測定しましょう。
騒音計アプリの場合はほとんどA特性で設定されていると思いますが、確認可能であればどんな特性で計測がされているかチェックしておくと良いでしょう。
Amazonなどで販売されている数千円~の騒音計の場合は「A特性」と「C特性」の両方が計測できるようになっているものも多いです。
そのため間違ってもC特性で騒音を測定してしまわないように気を付けましょう。
<防音室や壁の性能を測定したい場合>
次に身近な騒音計の用途としては防音室やDIYで作った防音壁などの性能の測定ではないでしょうか。
(防音室や防音壁を自作する方はそれほど多くないとは思いますが・・・)
この用途の場合ですが、もし「遮音等級」を測定したい場合は「Z特性」を使用する必要があります。
「遮音等級」とは「部屋の空気音遮断性能」を等級(レベル)にして表現したJIS規格です。
防音室や防音壁の性能はこの「遮音等級」で表現されることが一般的であるためDIYで防音室や壁を作った時には「遮音等級」を測定してみたくなると思います。
その場合は必ず「Z特性」での計測が必要となります。
(※しかしながら、遮音等級の測定は非常に専門性が高く、個人での測定は困難です。そのため遮音等級の測定が必要な場合は防音を専門に扱っている業者に依頼しましょう。参考として遮音等級を測定する際の方法をこちらの記事で解説しています。)
「遮音等級」を測定したいわけではなく、単純に防音室が騒音レベルをどれだけ減衰させることができるか?を知りたい場合は「A特性」での測定で問題ありません。
ただし、「A特性でー40dBA減衰できたから遮音等級D-40相当だ!」ということにはならないため注意が必要です。
■まとめ
騒音計で計測できる音圧レベルには主にA特性・C特性・Z特性の3種類がある。
A特性は人の音の聞こえ方に近似させた特性で、騒音レベルを測定する際に最も使われている。
C特性は大きな音を聞いた時の人の音の聞こえ方に近似させた特性で現在ではほとんど使われていない。
Z特性は一切重み付けを行っていない特性で、「遮音等級」などの測定時に使われている。
騒音レベル=A特性音圧レベルです。騒音を計測する際は「A特性」を使用しましょう!
「遮音等級」を計測する際は「Z特性」を使用しましょう!(ただし、実際には高い専門性が必要となるため防音の専門業者に依頼しましょう。)
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