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音響透過損失とは?

みなさん、こんにちは!

大阪を中心に関西の防音室の設計・工事をしている創和防音です。


防音の世界では様々な専門用語がありますが、中には「似ているようで全然違う」言葉もあったりします。


たとえば「音響透過損失」という言葉は「遮音等級D値」と混同されがちな言葉です。


実際意味するところは似ているのですが、似ているだけで全然違うため、正しく使い分ける必要がある言葉です。


そのため今回は「音響透過損失」という言葉について解説したいと思います。


 

■音響透過損失とは?

音響透過損失とは「建築材料の空気音遮断性能を表す数値」のことです。


音響透過損失は「TL」とも呼ばれ、「Transmission Loss」から取っています。


遮音等級D値は2室間の室間音圧レベル差、つまりその部屋全体が持つ遮音性能を表していたのに対し、

音響透過損失は「建築材料」が持つ遮音性能を表している、という点に注意が必要です。


 

■なぜ音響透過損失が必要なのか?

遮音等級D値は建具(扉・窓)の遮音性能だけではなく、壁・床・天井の仕様、室内の仕上げなどによってその性能が左右されます。


そのため、遮音等級D値では建具単体の遮音性能を評価することが出来ません。

(あくまで部屋全体の遮音性能の評価しかできません。)


しかし、建具そのものが持つ遮音性能がわからないと導入すべき建具の比較検討ができず不便です。


だからこそ、音響透過損失のような建築材料単体が持つ遮音性能を評価できるものが必要になるのです。


音響透過損失があれば、その建具単体が持っている遮音性能がわかり、製品ごとに比較ができるため便利です。


 

■音響透過損失は実際にどんな場面で使われる?

建築材料のカタログや教科書に載っている材料単体の遮音性能などは、音響透過損失です。


具体的な例を言うと、防音窓や扉のカタログ・HPに「T-○」と書かれた「T等級」というものが表記されている場合があります。


これはその建具(扉・窓)単体の遮音性能を等級にして表したものであり、音響透過損失値を基に決定されたものです。


 

■音響透過損失の定義

※この部分に関しては若干専門的な内容となりますので読み飛ばして頂いても問題ありません。


音は壁などの建築材料にぶつかった時、「反射・吸収・透過」の3つの振る舞いをします。


下記に音の振る舞いの様子を図にしたものを用意しました。

音の反射・吸収・透過の図解

この時の入射音と透過音の比の常用対数の10倍が音響透過損失となります。


式にすると以下のようになります。


音響透過損失 =10log10(入射音/透過音)

なお、単位はdB(デシベル)です。


 

■音響透過損失の計測は難しい

遮音等級D値と違い、音響透過損失は建築材料のみの遮音性能を評価するものです。


そのため、音響透過損失の計測をする際はその建築材料以外のものの影響(音の伝搬など)をできる限り排除して計測する必要があります。


つまり、建築材料以外の部分は出来る限り高い遮音性能を有していることが必要になります。


では、どのような環境で計測する必要があるのかというと、床・壁・天井全てがコンクリート製の部屋を2つ用意し、その間の壁に開口を設け、その部分に計測したい建築材料を設置して計測します。

音響透過損失の計測の概略図

このような試験室により、建築材料以外の部分の遮音性能を高めることで影響をできる限り排除し建築材料の音響透過損失は計測されます。


※音響透過損失の計測方法の詳細については「JIS A 1416」で規定されています。


逆に言うと、こういった試験室が無ければ音響透過損失の計測は難しいということです。


 

■まとめ

  • 音響透過損失とは「建築材料」の空気音遮断性能を表すもの

  • 遮音等級D値と似ていますが、遮音等級D値は「部屋全体」が持つ遮音性能を表しているのに対し、音響透過損失は「建築材料」が持つ遮音性能を表している、という点が異なる

  • 音響透過損失は建具などの建築材料単体の遮音性能を比較検討する際などに必要になる

  • 音響透過損失は建築材料のカタログや教科書に載っている材料単体の遮音性能などを示す際に使われている

  • 音響透過損失の計測は建築材料以外の部分に関して高い遮音性能を有している必要があるため特殊な試験室が必要となる(「JIS A 1416」で規定されている)


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